周囲に歯周靭帯を有するインプラントを開発することを最終目標として、動物実験を行った。用いたインプラントの素材は骨伝導能を有するハイドロキシアパタイトとした。テーパーのついた円柱状のハイドロキシアパタイトインプラントを成犬の下顎小臼歯の根分岐部に貫通させたものおよび成猿の上下前歯の根尖部を貫通させたものを用意した。術後5カ月で歯根およびインプラントを周囲の組織とともに摘出し、歯根から突出させたハイドロキシアパタイトインプラントの表面ならびに周囲について光学顕微鏡、電子顕微鏡を用いて病理組織学的に観察した。 その結果、歯根から突出させたインプラントの表面には元来の歯根セメント質から連続する新たな硬組織の形成がみられた。また、この新生硬組織の周囲には歯槽骨との間に結合組織が形成され、その一部の領域には歯周靭帯に類似したコラーゲン線維の配列も認められた。インプラントが周囲の骨組織とアンキローシスを起こしている部位はみられなかった。特にインプラント表面の新生硬組織を透過電子顕微鏡で観察したところ、同組織にはシャーピー線維の封入が認められ、このセメント質様の新生硬組織には咬合機能の負担能力が備わっていることがうかがえた。
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