従来義歯の適合性などに結び付けて検討されてきた頸骨の高度吸収について、高齢者の基礎疾患として重要視される高血圧症、とりわけわが国に多いとされる食塩感受性高血圧症が下頸骨の骨代謝に与える影響を検索した。生後12週齢の雄性ダール食塩感受性高血圧ラット(DSラット)28匹を4群(各群7匹)に分け、実験群として2群(H1、H2)に高食塩食を与え、対照群として2群(N1、N2)に通常食を与えた。血圧は実験群において対照群と比べて有意な上昇が認められた。実験開始8週間後にH1群、N1群を、22週後にH2群、N2群をそれぞれ屠殺し下頸骨を採取、DXAにより骨塩量測定を行った。さらに非脱灰研磨切片を作製し、骨量を求めた。また屠殺前日における24時間尿および血液から生化学的データを得た。その結果、骨量及び骨塩量は実験8週において両群に差は認められなかったものの、22週では実験群において対照群と比べ有意な減少が認められた。生化学的なデータについては、実験8週では実験群において対照群と比べ尿中Ca排泄量の有意な増加が認められ、22週ではそれに加えて血中総Caの減少と血中PTHの増加が実験群に認められた。このことは実験8週よりも22週において、Ca代謝動態がより負のほうに傾いている可能性を示している。 以上の知見により、DSラットにおいて、高食塩食摂取は重篤な高血圧発症のみならずCa代謝異常をもひきおこし、これにより下頸骨の骨量減少が生じる可能性が示唆された。今後、さらに高食塩食負荷がDSラット下頸骨に与える影響を検索していく予定である。
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