研究概要 |
本研究は、アルギン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウムの接触で形成されるアルジネート膜をGBRにおける細胞遮断膜として応用しようとする研究である。 アルギン酸ナトリウム水溶液を骨欠損内部に充填し、塩化カルシウム水溶液を滴下するという極めて簡便な方法でアルジネート膜が骨表面に形成されることがわかった。形成されるアルジネート膜は半透膜の弾性膜であり、アルギン酸ナトリウム水溶液の濃度、塩化カルシウム水溶液の濃度の増大とともに厚膜となることがわかった。 そこで、1)アルジネート膜の設置方法、2)GBRの適用部位について実験動物を用いて検討した。実験動物(ウィスター系ラット)の頸骨に貫通骨欠損を形成した。アルギン酸ナトリウム水溶液を骨欠損に充填し、その後で塩化カルシウム水溶液を滴下し、骨欠損部に直接アルジネート膜を形成する方法(以下、直接法と呼ぶ)および、あらかじめ形成したアルジネート膜で骨欠損部を被覆する方法(以下、間接法と呼ぶ)によるGBRを行った。GBR施術後、2,4,8週後に実験動物を麻酔下で灌流固定し、頸骨を周囲組織と一塊に摘出、脱灰組織切片を作製し、HE染色を行い、病理組織学的観察を行った。 その結果、間接法でアルジネート膜を設置した場合には骨欠損部の筋肉側骨欠損に骨組織の再生が認められたものの、表皮側骨欠損部には骨組織の形成が認められなかった。筋肉側では筋肉によるアルジネート膜の保持が可能であるが、表皮側ではそのような保持力を期待できないため、このような差異が発生すると考えられる。一方、直接法でアルジネート膜を設置した場合には、アルジネート膜の形成条件により骨再生の差異が認められた。すなわち、アルジネート膜が薄い場合には膜が凹面となり、骨の陥没が認められた。アルジネート膜が厚い場合には、アルジネートによる骨形成の阻害が認められた。アルジネート膜が適切な厚さの場合は、骨欠損部の筋肉側骨欠損、表皮側骨欠損に関わらず良好な骨再生が認められた。これらの結果からアルジネート膜を用いたGBR法は骨再生法として極めて有効であるが、間接法を用いる場合には筋肉側骨欠損部の骨再生に適用が限定されること、直接法を用いる場合には筋肉側、表皮側に関わらず骨再生に有効であるが、アルジネート膜の膜厚条件が重要であることが示唆された。
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