研究概要 |
過去の多くの研究から,ブラキシズムと精神的ストレスとの関連が指摘されてきた.しかし,その機構についてはまだ明らかにされてはいない.これまでに報告された推論には,ブラキシズムが精神的ストレスを抑制するために,生体に有益に機能しているとするものがある.この推論が正しいものならば,ブラキシズムに対する現在の歯科臨床での対応を再確認する必要がある.つまり,ブラキシズムを抑制するのであれば,あらかじめブラキシズムの生体に対する利害を十分に理解した上で,その有害性が有益性を上回るときにのみ,なされるべきである.そこで,本研究では,上記仮説を検証すべく,夜間ブラキシズムの抑制の有無による就寝前後の尿中ストレスホルモン量の差を比較・検討することを目的とした. 本研究の被験者には,自覚あるいは他覚的に夜間ブラキシズムを認める有歯顎者30名を選択した.選択された被験者の印象を採得し,得られた模型上で顎運動抑制装置とこの装置のダミーとして,これと同形態で顎運動を阻害しない装置を作製した.同一被験者内で,顎運動抑制装置使用,同装置のダミー使用,装置非使用の三条件を設定し,それぞれの条件ごとに就寝前後の尿を採取し,尿中ストレスホルモン量を測定することで,この濃度変化をストレス値の指標とした.これと同時に,両側咬筋の就寝中の筋電図を計測し,筋放電の状態をブラキシズムの抑制量の指標とした. 現在,選択された被験者におけるデータ採得が完了したところであり,今後,得られたデータの分析を遂行し,ブラキシズムの抑制条件,尿中ストレスホルモン量,筋放電量の結果の関連について検討を加える計画である.
|