研究概要 |
生体に世代を越えた重大な影響を及ぼすことが懸念されている内分泌撹乱化学物質(環境ホルモン)は,歯科材料からも溶出している可能性が指摘されている。内分泌撹乱化学物質はきわめて低濃度でも作用する可能性があり,常時口腔内にある歯科材料においては,一般食品に劣らず厳格な安全性が求められるべきで,少しでも疑わしい物質が溶出することは事前に阻止されなければならない。そごで,歯科材料の安全性の検討の一手法として,実際の生体への影響を予測する上でもっとも効果的であるバイオアッセイ法を用いることとした。内分泌撹乱物質のバイオアッセイには,擬エストロゲン作用を直接判定することを含め,様々な手法が開発されつつある。本研究は,サワガニを用いたバイオアッセイ法を確立し,口腔内で溶出する内分泌撹乱物質の安全性の判断に応用するものである。サワガニは,カニ類の中でも例外的な直達発達型の発生をおこなうため,発生初期に親ガニから供給された卵栄養を通して内分泌撹乱物質に暴露していることが考えられ,きわめて微量の化学物質で雌雄モザイクを示すことが,本研究で確認され,サワガニの雌雄モザイクの発生率とサワガニの生活環境中のヒ素との強い相関関係を見出した。現在,ヒ素の遺伝毒性およびエストロゲン活性試験を培養細胞および酵母を用いたin vitro試験系で実験を行っている。さらに,日本各地域でのサワガニの生態調査および実際のサワガニを飼育してのin vivoでの暴露実験を行い,原因究明を行っている。本研究は,イギリスおよび日本の環境省の共同研究としても取り上げられている。
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