研究概要 |
本研究では,インプラント上部構造に口腔内細菌が形成するバイオフィルムが周囲軟組織に及ぼす影響検討するために,まず,術者可撤式インプラントに付着しているプラークをサンプリングし,菌種の同定および菌数の計測を行った.同時に,被験者の咽頭,義歯粘膜面からもプラークを採取し,比較検討を行った.評価する微生物は総微生物,口腔レンサ球菌,ブドウ球菌,カンジダ,緑膿菌の5種とし,その数と検出率について評価した.その結果,インプラント周囲から検出される微生物数は少ない傾向にあり,口腔連鎖球菌がほとんどであった.デンチャープラークや咽頭からブドウ球菌,カンジダが多く検出されている場合でも,インプラント周囲からはそれらは検出されない場合が多かった. 次に,金,チタンをセルディスクに真空蒸着し,そのうえで口腔レンサ球菌,カンジダなどを増殖させ,バイオフィルム形成能を比較検討した.その結果,チタンの方がバイオフィルムの形成能が低い傾向にあった.しかし,寒天培地上に口腔レンサ球菌,カンジダを塗沫し,培地中央にチタンディスクを置き,37℃で48時間培養後,コロニーの形成を観察したところ,チタンディスク周囲にコロニーの阻止円は認められなかった.このことから,チタンそのものに微生物の増殖抑制は認められないことが明らかとなった. 以上のことからチタンそのものは口腔内微生物の増殖を抑制するわけではないが,チタン上では口腔内微生物のバイオフィルムが形成されにくいことが示唆された.しかし,上部構造の形態の及ぼす影響については明らかにすることができなかった.
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