研究概要 |
今年度はまず,酸化チタンの光触媒薄膜コーティングができる歯科用材料を決定することを主眼にした. 各種義歯用レジンやコンポジットレジン,セラミックス,純チタンを作製し,酸化チタンの薄膜コーティングが可能か検討した.その結果,スプレーコーティングによって,いずれの材料でも厚さ約0.7μmの酸化チタン薄膜を形成することができた.薄膜の基板との密着性を高めるためには加熱することが必要であるが,チタンやセラミックスでは450℃まで加熱できたが,レジンに関しては基板材料の変形を考慮して,50℃前後までしか加熱できなかった.次に,コーティング膜の表面分析を行ったが,いずれの基板で形成された薄膜も酸化チタンであり,その結晶構造はアナターゼであることが判明し,その光触媒作用が期待できると思われた. しかしながら,コーティング膜の基板との接着強さは,加熱温度が低かったレジンでは,約10MPaと低い値を示し,チタンやセラミックスでは80MPa以上の接着強さを示し,その有用性が示唆された.さらに,薄膜にステンレス球を滑走させてその摩擦係数を測定した.コーティングしたチタンでは耐摩耗性が向上したが,レジンではその密着強度が小さかったことから,簡単に剥離し耐摩耗性の向上が全く認められなかった.また,滑走部表面を電子顕微鏡で観察したところ,コーティングしたチタンでは明瞭に塑性変形しているのがわかったが,レジンでは膜にクラックが入り,チタンのような摺動痕が認められなかった. 以上のことから,酸化チタンの薄膜コーティングは,チタンとセラミックスにきわめて有効であることがわかった.
|