研究初年度に当たる本年度は、18種類の成分・組成の異なるAg-Pd-Cu-Au合金を溶製し、腐食試験用の試験片を鋳造により作製した。鏡面に研磨した試験片を0.9%NaCl溶液中に浸漬し、文流インピーダンス法を適用して自然浸漬状態における各合金の腐食速度を計測した。また、同様に自然浸漬状態における溶出イオン量をグラファイト炉原子吸光法にて定量した。得られた結果を以下にまとめて示す。 (1)腐食速度は、合金の(Au+Pd)含有量の増加にしたがって、直線的に減少することが明らかとなった。Au+Pd含有量が20mass%の合金の腐食速度は、Au+Pd含有量50mass%の合金の約3倍であった。 (2)合金から溶出する主な金属イオンは、Au+Pd含有量が20〜30%の合金ではAgイオン、Au+Pd含有量が35%の合金ではAgイオンとCuイオン、Au+Pd含有量が40〜50%の合金ではCuイオンであることが明らかとなった。 (3)Agイオンの溶出量は、Au+Pd含有量の増加とともに減少した。AuとPdを20%含有する合金から溶出したAgイオン量(31.6ng・mm^<-1>)は、AuとPdを50%含有する合金の約3倍であった。 (4)本実験で用いたAg-Pd-Cu-Au合金から溶出したCuイオン量は、18K金合金から溶出するCuイオン量と有意な差は認められなかった。 本年度得られた実験結果から、高い耐食性を有し、かつアレルギー性の低いAg-Pd-Cu-Au合金として、AuとPdを45〜50%含有する合金が有望であることが明らかとなった。
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