研究2年目の本年度は、前年度の研究成果に基いて、Ag-45Pd-18Cu-12Au合金およびAg-45Pd-18Cu-12Au-5Ga合金を作製し、生理食塩水中における腐食機構を調べるとともに、それらの耐食性を評価した。生理食塩水中における腐食挙動は、(1)アノード分極曲線の測定、(2)交流インピーダンス測定、(3)原子吸光法を用いた溶出金属イオンの定量、(4)X線光電子分光法(XPS)を用いた合金表面の分析を行うことによって調べた。得られた結果を以下にまとめて示す。 (1)生理食塩水中においては、Ag-45Pd-18Cu-12Au合金とAg-45Pd-18Cu-12Au-5Ga合金のアノード分極挙動と交流インピーダンス測定から求められた分極抵抗の値には、顕著な差は認められなかった。 (2)いずれの合金においても、+400mVより低い電位域では、主な腐食反応はAgイオンおよびCuイオンの溶出反応であった。+400mVより貴な電位では、塩化銀(AgCl)の生成反応が生じていた。 (3)Ag-45Pd-18Cu-12Au-5Ga合金から溶出したGaイオンは微量であり、Gaの選択溶解は大きな問題とはならないことが明らかとなった。 (4)自然浸漬状態では、いずれの合金の腐食電位も+400mVよりも卑であるため、塩化銀生成反応は生じず、主反応はCuイオンとAgイオンの溶出反応であった。また、Pdイオンも極く微量ではあるが溶出していることが確認された。 (5)自然浸漬状態における溶出金属イオンの量は、いずれの合金においても市販されている金銀パラジウム合金と比較して約1/10に減少した。 (6)Gaの添加は、添加量が微量であれば、耐食性を低下させることなくAg-Pd-Cu-Au合金の液相点を低下させて、鋳造性を改善する効果があることが確認された。
|