研究課題/領域番号 |
11671943
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研究機関 | 北海道医療大学 |
研究代表者 |
遠藤 一彦 北海道医療大学, 歯学部, 助教授 (70168821)
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研究分担者 |
大野 弘機 北海道医療大学, 歯学部, 教授 (70018430)
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キーワード | 金銀パラジウム合金 / 金属アレルギー / 腐食 / 硫化変色 / 動電位分極法 / X線光電子分光法 / 鋳造性 / ビッカース硬さ |
研究概要 |
研究最終年に当たるの本年度は、前年度までに得られた結果に基づいて、十分に高い耐食性を有し、かつアレルギー性の低いと考えられる合金Ag-45Pd-18Cu-12Au合金にGaならびにZnを微量(5%以下)添加して鋳造性の改善を図るとともに、機械的性質に対する微量添加元素の影響を調べた。また、金銀パラジウム合金は、口腔内での硫化変色が問題となっていることから、0.1%硫化ナトリウム溶液中で動電位分極法を用いて腐食挙動を調べるとともに、X線光電子分光法(XPS)を用いて合金表面の不動態皮膜の構造を明らかにした。得られた知見を以下に示す。 (1)GaおよびZnの添加量を増加すると合金の液相点は低下し、鋳造性は顕著に改善することが確認された。 (2)ビッカース硬さの値は、Ga無添加の合金で170であり、Gaの添加量の増大とともに増大した。Ga添加量5%の合金では、ビッカース硬さは350に達した。 (3)Gaの添加は、その添加量が5%以下であれば、金銀パラジウム合金の0.1%硫化ナトリウム溶液中における耐食性ならびに耐変色性に影響せず、純Ptと同程度の耐食性を有する。 (4)Pdを45mass%含有する合金の硫化物溶液中における高い耐食性は、表面に生成した硫化物皮膜によって獲得されることが分かった。XPSを用いて合金の表面を分析した結果、この硫化物皮膜はPdSを主成分とし、その厚さは、1nm以下であることが分かった。 (5)(4)の結果から、本合金は貴金属合金であるにもかかわらず、硫化物溶液中で不動態化することによって高い耐食性を有することが明らかとなった。 (6)Pdを45%含有する合金は、市販されている金銀パラジウム合金と比較して金属イオンの溶出量が極めて微量であり、さらに硫化変色もしないことが明らかとなった。また、鋳造性や機械的性質は、GaやZnを微量添加することによって耐食性を低下させることなく向上させることができ、本合金は様々な修復物や補綴物に適用が可能であることが明らかとなった。
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