研究概要 |
急速加熱型埋没材によるヒートショック法を用いれば,従来よりも作業時間の大幅な短縮が見込めるが,ぬれた状態の型材に急激な熱負荷を与えると亀裂の発生や鋳型自体の爆発が起こることが知られている。特に,金属床義歯のように大型の鋳造の場合には,鋳造リングを使用しない場合が多いのでこのような傾向が強い。 本年度では,特に急速加熱型とされていない市販のチタン鋳造用埋没材を鋳型材として用い,ヒートショック法が適用できるためには何が必要であるのかを検討した。その結果,選んだ3種類の埋没材(セレベストD,T-インベスト,CDチタンインベストメント)はいずれも練和開始から30分後に約800℃に予熱されている電気炉にいれても鋳型は大きな損傷を受けないことが分かった。一方,いくつかの市販高温鋳造用リン酸塩系埋没材は同じ条件で行うと鋳型が爆発することも判明した。この爆発の原因については急激な熱負荷による鋳型材の寸法変化,余剰水分の蒸発に伴う水蒸気あるいはリン酸塩系埋没材の結合材であるアンモニア塩の分解によるアンモニアガスなどのガス圧によるものなどが考えられる。これらの埋没材については予熱温度を600℃程度まで下げることにより解決できたが,実際の鋳造にあたっては金属の溶融温度がチタンで約1700℃,Co-Cr合金で約1400℃とかなり高温なため,鋳込み不足が懸念される。通常,ヒートショックでは電気炉に入れてから30分後に鋳造するのであるが,鋳型が大型の場合には中心部まで十分に焼けるように係留時間を延長する,あるいは電気炉に入れてから鋳造に至るまでの間に昇温することが必要であることが示唆された。
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