研究概要 |
B型,C型肝炎の感染が確認されている患者から簡易唾液採取器具オラシュアを用いて唾液を採取し,血清用肝炎抗体キットで唾液による肝炎抗体測定を行った.実験内容は唾液試料に対する基礎的検索事項として,1.同時再現性試験,2.希釈試験,3.凍結融解試験,4.保存安定性試験.また臨床的な検索として,同検体より採取した血液試料との結果を比較した.陰性陽性の唾液試料を用いた連続10回の同時再現性試験は,HBVで変動係数がそれぞれ36.6%,9.1%であった.同じくHCVでは変動係数は18.4%,5.5%であった.次にHBVおよびHCV抗体陽性および陰性の唾液試料をキット添付のアッセイ緩衝液で希釈して希釈直線性を検討したところ各々の試料においてほぼ理論値と同様の原点を通る直線性が得られた.凍結融解試験ではHBV,HCV抗体陽性および陰性の唾液試料を用いて6回の測定を行った.測定値およびその判定値には変化は認められなかった.同様にして50℃,室温,4℃,-20℃の温度における,B型で12,24h後,7,14日後,C型では12,24h後,2,5,10,14日後に抗体濃度を測定し,14日間の保存安定性を検討した.HCV抗体陽性試料の温度50℃の測定値が10日から14日後にかけて吸光度が1.0低下したが,その変動は精度範囲内であった.一方,陰性試料においては14日間までは全く変動は認められなかった.最後に本学歯科病院での検体15例及び有床義歯学講座医局員健常者16例による血清および唾液中のHBc,HCV抗体をそれぞれ測定した.血清結果に対する唾液の陽性および陰性の判別は,HBcで陽性一致率86%であり,陰性一致率100%であった.またHCVでは陽性一致率88%であり,陰性一致率100%であった.
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