セラミックスコアで支台築造した歯根に対して破壊試験を行い、破折荷重をもとめ、このときの歯牙の破壊状況を合わせてセラミックスコアの評価を行っている。 この過程で、問題となっているのはテストベッドとして使用している歯牙の「形状」や、術者の手元に至るまでの「経歴」によって破壊荷重や破壊の状況が異なり、実験条件を比較しがたいことである。 現在統計処理が可能な程のまとまった数の新鮮抜去歯牙は入手困難で、また抜歯の対象となる程に破壊の進んだ歯牙では破壊試験のベッドとはなりえない。特に試験に至までの経歴の詳細を知ることは不可能に近く、今後の評価実験の正否を決定するのは「均質で、良好なテストベッドとしての歯牙」を継続的に確保する手段の確保にあるといっても過言ではない。 そこで本年は代替材料(代替歯牙)として適当なものの検索を行った。材料としてはメラミン樹脂製歯牙模型、コンポジットレジンブロック、牛歯等を対象とした。 「解剖学的なヒト歯牙模型」の臨床歯冠を切断したものを倣いのモデルとして、「歯科用手動倣い加工機」を用いて一定形状の疑似歯根をこれらの材料から製作した。その後これらに支台築造を行い、破壊試験を行った。 その結果牛歯を素材としたものが、最も人の歯牙の破壊状況を正確に反映することが明らかとなった。牛歯としては食肉用の黒毛和牛では屠畜年齢が低く、歯髄腔が大きいのでポストホールの形成に難があり、臨床的な形態に形成できない。最終的に非食肉用のもの(ホルスタイン種)ならば屠畜年齢が高くヒトの歯髄腔と同じ大きさか、より小さいところから、理想的であることがわかった。さらに破壊状況には材料よりも形状が大きい要因であることが推察される。 この術式によれば破壊試験に使用できるばかりではなく、接着強さについてもほぼヒト歯牙と同様であるところから今後のテストベッドとして理想的なものであるといえる。
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