研究概要 |
平成11年度までに,本学部付属歯科病院において抜去した,齲蝕や修復のない葉の歯冠象牙質および歯根象牙質と合着用レジンセメントとの接着力の違いについて,スーパーボンド以外のレジンセメントでは,歯冠に比べて歯根の方が低いことがわかった。また,各レジンセメントのプライマーによる処理面の電子顕微鏡観察ではスーパーボンド以外では歯根において多くのスメアー層の存在が確認された。更に形成されたレジンタグは歯冠において長く,密に存在していた。これらのことはレジンタグが接着強さに影響していることを示した。レジンタグの形成は切削後に生じるスメアー層の除去の程度に依存しており,除去効果が大きければタグも形成されやすくなる。したがって,これらの結果から同じ処理剤を用いて同じ時間処理を行っても歯冠と歯根ではスメアー層の除去の程度に差があり,その差が接着力に影響を与えたことが予測された。そこで平成12年度においては,スメアー層の差の確認を行うとともに,その要因が歯冠と歯根の成分の違いに依るものなのかを確認するために実験を行ってきた。先ず,最近開発された島津社製マイクロフォーカスX線CTシステムがこれらの目的に使用できるかどうかを判定するために牛歯を用いて予備撮影を行った。その結果,歯冠と歯根の石灰化の程度の差を十分示すことがわかり,現在は人歯において行っている。また,プライマーによる処理の程度と,樹脂含浸層の厚さに違いについてエリオニクス社製超微小押し込み硬さ試験機ENT-1100aにて接着界面から2mmの間隔で象牙質の硬さを測定した結果,樹脂含浸層の差はあまり認められなかったが含浸層直下の象牙質においては歯根の方が深部にまで処理されていることがわかり,接着力の差は,歯冠と歯根の成分の違いによる処理層やスメアー層の形成の程度の差に依存している可能性が大きいものとなった。
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