研究概要 |
平成12年から平成14年までサンプリングを行い,中間解析を行ったところ,結論を述べるのに十分なサンプルサイズを得たことが判明した.そこで,平成14年度は研究のまとめに入り,104補綴学会にて結果の一部を発表し,現在論文投稿中である.ここに,結果の一部を記述する.目的:長期使用型軟性裏装材の臨床研究は少なく,使用に関する明確な根拠は少ない.そこで,臨床の現場における,軟性裏装材使用に関する根拠の一端を検索することを本研究の目的とした.方法:日本大学松戸歯学部付属歯科病院に来院した無歯顎患者から,選択基準を満たした患者をサンプリングした.被験者総数は28名であった.研究デザインは2期型クロスオーバー法による無作為割付臨床試験である.通法による上下総義歯治療および,上顎は通法義歯,下顎は軟性裏装材(ソフリライナーMS,トクヤマ)使用時の義歯治療を介入として行った.層別化ブロックランダム法を用い,通法義歯から軟性裏装材使用義歯へ移行する群と,その逆の2群に割付を行った.検討項目は(1)咀嚼値(2)調整状況(3)義歯の嗜好とした.分析はITT解析の概念で行った.結果:(1)調整完了から1か月後において,通法義歯と軟性義歯に咀嚼値の違いは認められなかった.これに対し,2〜3か月目では,軟性裏装義歯の咀嚼値(55.4±10.1%,56.3±8.7%)は通法義歯(47.9±11.9%,48.9±12.3%)より高かった.(2)軟性裏装義歯の調整回数(2.6±1.5回)は通法義歯の調整回数(3.6±1.8回)より少なかった.(3)72%(18/25)の被験者が軟性裏装義歯を選択した.結論:下顎総義歯への長期使用型軟性裏装材の応用により,咀嚼能力の向上や調整回数の減少が生じた.また,多くの被験者は軟性裏装材を使用した義歯を好んだ.義歯に対する患者の満足度に関しては,現在分析を行い,投稿準備中である.
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