HEMAと脱灰象牙質粉末とを水溶液中に共存させ、^<13>C NMRスペクトルを測定し、HEMAに帰属されるカーボン核の縦緩和時間(T_1)を測定し、T_1の値の変化からHEMAと象牙質コラーゲンとの相互作用の詳細を検討した。 その結果、HEMAと脱灰象牙質粉末とを共存させる水溶液のPHを、塩酸を加えて4.1から1.6に低下させると、あるいは水酸化ナトリウムを加えて4.1から6.5に上昇させると、HEMAエステルカルボニルカーボン核のT_1の値は大きく減少した。これは、HEMAエステルカルボニル基が象牙質コラーゲンと相互作用を起こし、HEMAの分子運動が拘束されたためと考えられる。 そこで、HEMAエステルカルボニル基が相互作用を起こす象牙質コラーゲンの官能基を同定するため、象牙質コラーゲンの側鎖官能基と同じ官能基を有するコラーゲン化合物[-(Pro-X-Gly)_3-、X=Hyp、Arg、Asp]を用い、HEMA共存系でモデル化合物のT_1を測定した。その結果、塩酸を添加した酸性溶液(PH=2.4、1.6)中ではHEMAエステルカルボニル基はAspの側鎖カルボキシル基と相互作用を起こすため、HEMAエステルカルボニルカーボン核のT_1の値は大きく減少することがわかった。 しかし、水酸化ナトリウムを加え水溶液のpHを4.1から6.5と高くすると、HEMAエステルカルボニルカーボン核のT_1の値は増大し、脱灰象牙質粉末を共存させた場合に得られた結果とは異なる結果が得られた。 現在、両者の相互作用についてさらに詳細に検討中である。
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