研究概要 |
上部構造体は審美性を考慮した材質が種々用いられているが,その材質による違いが動揺度や振動特性に与える影響についての報告は少ない.そこで上部構造体の材質による違いが振動特性に与える影響について比較検討を行った.直径3.75mm,長さ13.0mmのインプラントを超硬質石膏に埋入しインプラント模型を作成した.上部構造体はコニカルおよびUCLAアバットメントを用い,臨床使用頻度の高い陶材焼付鋳造冠(PFM),エステニア(ES)および即時重合レジン(U-II)にて同一外形を有する下顎小臼歯形態の単冠を作製した.上部構造の装着はトルクレンチを用い20Ncmの条件にて固定した.加振装置はペリオテストを用い,計測には小野測器社製NP-3210加速度センサーとCF-300FFTアナライザーを使用して振動波形と周波数スペクトラムとして求めた. 測定の結果,コニカルアバットメントにおける振動持続時間はPFM,ES,U-IIともに6.5msec前後であり上部構造材料間での有意差はなかった.またピーク周波数もPFM,ES,U-IIともに2.65KHz前後で上部構造材料間での有意差はなかった.一方UCLAアバットメントにおける平均振動持続時間(msec)は,PFM(3.56),ES(3.44),U-II(4.18)で,PFMとU-IIおよびESとU-II間に有意差があった.また平均ピーク周波数(KHz)は,PFM(3.85),ES(3.84),U-II(2.98)で,PFMとU-IIおよびESとU-II間に有意差があった.コニカルアバットメントを使用した場合は,アバットメント自体およびネジ止め機構が衝撃をある程度吸収し,上部構造体材質の影響が顕著に現れなかったものと思われる.一方UCLAアバットメントでは,インプラント体に上部構造がアバットメントスクリューにより直接ネジ止めされるため,上部構造体材質の影響が振動時間およびピーク周波数に直接反映したものと思われる.
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