金パラジウム銀合金は歯科修復用鋳造用合金として多用されている。しかし本合金はしばしば破壊することがあり靭性に問題がある。この靭性は析出β相に影響されることが判明している。本研究はこの種合金のミクロ組成を系統的に変化させたときの破壊靭性値を測定し、新合金創製のための基礎データとして破壊靭性値に及ぼす析出β相の影響について検討した。 同一寸法のβ相が析出させた場合、析出β相の体積率の増大に伴って破壊靭性値が低下した。一方、析出β相の体積率が同一である場合析出相の直径が小さいほど破壊靭性値は減少する傾向を示した。これはβ相の析出量が増大するとともにマトリックスである_<α2>相の変形の拘束度が増し、亀裂先端の塑性変形量が低下するためであることが判明した。また、析出β相の寸法が大きくなると塑性変形を担う析出β粒子間のマトリックスの幅が大きくなるので塑性変形量が増大し、臨界亀裂先端開口度値が増大するため破壊靭性値を向上させると推察される。
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