研究概要 |
種々の熱処理を施し、歯科用金-パラジウム-銀合金のミクロ組織を系統的に変化させたときの機械的性質、特に疲労強度を測定し、ミクロ組織中のα_1相,β相と疲労強度との関係について検討した。 (1)本合金の溶体化水冷材の疲労強度は低サイクル疲労寿命領域では溶体化温度が高い程、α_2相の固溶強化が増大するため、疲労強度は増大する傾向にある。一方、高サイクル疲労寿命領域では溶体化温度が低い程β相の析出が増大し、このβ相の転位拘束によりひずみの局所集中が生じるために疲労強度が増大した。しかし、β相の析出は高サイクル疲労寿命領域ではβ相が疲労亀裂の発生および進展サイトとなるため著しく低下する。 (2)α_1相の体積率を大きくすると繰り返し荷重により、α_1相自体が加工硬化する。この加工硬化作用が局所ひずみの緩和効果に大きく寄与し、その結果高サイクル疲労寿命領域の疲労強度を向上させることが判明した。 従って、疲労強度の絶対値を向上させるにはα_1相とβ相の体積率の最適量を正確に決定することが必要であることが判明した。
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