研究概要 |
生体の顆頭安定位に,下顎頭と下顎窩の形態的要素がどう関与しているかを追及することが本研究の目的である。そこで,顎関節骨形態をCT画像から構築することによって,顆頭安定位における骨関節隙を顎関節全体について3次元的に計測し,下顎頭と下顎窩との距離の分布特性から下顎頭と下顎窩の両者に形態的な適合性があるのか,またあれば,どの様な特徴があるのかを検討した。結果の概要を,以下に示す。 1.骨関節隙の計測法の開発:CT検査は,顎関節部の上下的に15mmの範囲を水平断にてスライス厚2mm,スライス間隔1mmで行った。このCT画像をCPUにスキャナーで取り込み,顎関節中央部を中心として前後・左右的に30mm四方の範囲にある下顎窩と下顎頭の骨形態の2次元座標を計測した。顎関節骨形態を3次元的に構築するために,下顎窩と下顎頭の輪郭線の2次元座標値をスプライン補間し,新たな2次元座標値をサンプリングした。この座標値から,まず上下方向の点列を作成し,次いでこの点列を補間して曲線化してから約0.25mm間隔で3次元構築用の構成点の座標値を抽出した。顆頭安定位での骨関節隙量は,下顎窩と下顎頭上の構成点間の最短距離を下顎窩―下顎頭間距離として,隣接する3個の構成点における下顎窩―下顎頭間距離の平均値(D)を算出して求めた。これを1mmごとに5段階に分けて下顎頭の構築像上に表示し,近接部位分布図とした。 2.近接部位分布図を下顎頭の長軸を基準に6部位に分割して,5段階に分けた近接部位ごとの面積が占める割合を検討した結果,1mm<D≦2mmの近接部位が占める割合は,外側で高く,内側に向かうにつれて順次小さくなった。これは,下顎窩と下顎頭の状態は,中心咬合位では外側部より適合していることを意味していて,顆頭安定位における形態的特徴を示す一つと考える。
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