研究概要 |
口腔癌および前癌病変(白板症、扁平苔癬)、前癌状態(粘膜下線維症)の組織を用いて、遺伝子異常の検索を行った。今年度は前癌病変の癌への「なりやすさ」、クロナリティを判定するために、多重病変を有する患者の癌組織、あるいは前癌病変の組織を用いて遺伝子変異、染色体上の変異を検討し、公表した(Oncogene,20 : 2235-2242, 2001)。今回新たに前癌病変、前癌状態の症例を169例についてp53遺伝子変異の検索を行い、白板症で8/115(7%)、扁平苔癬で3/22(14%)、粘膜下線維症で2/32(6%)に異常を認めた。このp53遺伝子の異常を同定する方法としてyeast functional assayを用い、より簡便、正確な診断を可能にした。これらの結果は第5回国際癌予防シンポジウム(Geneve)にて公表した。p53遺伝子に異常を認めた症例は今後経過を観察し、悪性化の有無を確認する。また、これらの患者の血液を用いて、Cytochrome P-450、Glutathione-S-transferaseの遺伝子多型を解析することによって、発癌物質に対する宿主の感受性について検討し、発癌物質に対して抵抗性であり、口腔癌になりにくい宿主の存在を突き止めた(Carcinogenesis, in press)。 以上の結果より、口腔粘膜における遺伝子異常は癌化の比較的早い段階で起こっており、特に発癌物質に高い感受性を有するような宿主に対しては、このような時期に癌予防のための生活習慣の改善が必要でと思われた。
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