研究概要 |
骨芽細胞の増殖・分化が骨形成過程における放射線照射時期の違いによってどのような影響を受けるのかをラット胎児の頭蓋骨から採取した骨芽細胞を用いて検討し下記の結果を得た。 1.細胞数は非照射群では経日的に増加したが、照射群では照射線量が5Gy,10Gy,15Gyと増加するにつれ、細胞増殖は線量依存的に有意に抑制された。 2.アルカリフォスファターゼ(ALP)活性は非照射群では経日的に増加した。培地変更日を0日目とすると4日目に照射した群では7日目、14日目、21日目、28日目のいずれの時点においても非照射群と比較してALP活性は線量依存的に有意に抑制された。11日目に照射した群では14日目、21日目の時点でALP活性は非照射群と比較して有意差がなかった。また照射群ではALP活性は21日目頃に最大となった。18日目に照射した群のうち5Gy群,10Gy群では21日目に非照射群と比較してALP活性が有意に上昇した。 3.石灰化面積は非照射群では経日的に増加した。4日目に照射した群では14日目、21日目、28日目のいずれの時点においても非照射群と比較して石灰化面積は線量依存的に有意に抑制された。11日目に照射した群では14日目に非照射群と比較して石灰化面積は有意に抑制されたが、21日目では非照射群と比較して有意差はなかった。18日目に照射した群のうち5Gy群では21日目に非照射群と比較して石灰化面積は有意に増加した。 増殖期の骨芽細胞に放射線照射すると骨芽細胞の増殖・分化が線量依存的に抑制されたが、骨芽細胞の増殖能が低下してきた時期に照射をするとALP活性、石灰化面積は一過性に上昇、増加した。以上の結果から骨芽細胞が分化できる環境が整った時期に放射線照射すると細胞増殖が抑制され、分化が促進される可能性が示唆された。
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