骨芽細胞の増殖・分化が骨形成過程における放射線照射時期の違いによってどのような影響を受けるのかをラット胎児の頭蓋骨から採取した骨芽細胞を用いて検討し下記の結果を得た。 1.骨芽細胞の増殖は骨形成過程のどの時期に照射を行っても線量依存的に抑制された。 2.アルカリフォスファターゼ(ALP)活性は非照射群では経日的に増加した。培地変更日を0日目とすると細胞増殖期である4日目に照射した群では7日目、14日目、21日目、28日目のいずれの時点においても非照射群と比較してALP活性は線量依存的に有意に抑制された。しかし、細胞外基質の成熟期である11日目に照射した群では21日目、28日目の時点でALP活性は非照射群と比較して有意に上昇した。また石灰化期である18日目に照射をすると21日目、28日目の時点でALP活性は非照射群と比較して有意に上昇した。 石灰化面積は非照射群では経日的に増加した。4日目に照射した群では14日目、21日目、28日目のいずれの時点においても非照射群と比較して石灰化面積は線量依存的に有意に抑制された。18日目に照射した群のうち5Gy群では28日目に非照射群と比較して石灰化面積は有意に増加した。 骨形成過程の細胞増殖期に放射線照射をすると骨芽細胞の増殖・分化はともに抑制されたが、細胞外基質の成熟期あるいは石灰化期に照射をするとALP活性、石灰化面積は一過性に上昇、増加した。照射をすると骨芽細胞のDNAに変異が起き、それを修復するためにP53によって細胞周期が一時的に止められる。これがG1 arrestで、このときDNAの障害の程度によってあるものは修復され、修復不可能なものにはapoptosisが起こる。しかし、今回の結果からG1 arrestが起こったときに骨芽細胞が分化できる環境が整っていれば、DNAの修復やapoptosisばかりでなく分化も誘導される可能性が示唆された。
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