研究概要 |
前年度、ヒト第3染色体のSubchromosomal Transferable Fragments(STFs)クローン16種類を作製し、それらの内6種類の細胞株のヌードマウスに対する造腫瘍性を検討した。その結果、ヒト第3染色体ほぼ全体が移入されたA9(neo3B)細胞のみ造腫瘍性が著しく抑制されていた。一方、同様にほぼ全体が移入されていたA9(neo3A)細胞では造腫瘍性は抑制されなかった。本年度は、これら両細胞の造腫瘍性の相違をDNA及びRNAレベルで解析し、ヒト第3染色体に存在していると思われる癌抑制遺伝子の同定を試みた。同時に、口腔癌臨床検体及び細胞株を用いて第3染色体短腕の構造異常について解析した。 1.DNAレベルにおける解析 A9(neo3A)及びA9(neo3B)細胞を対象に染色体解析を行ったが、両細胞株に移入されたヒト第3染色体に大きな構造異常や欠失は認めなかった。また、ヒト第3染色体上のマイクロサテライト・マーカーを用いた解析においても両細胞株のヒト第3染色体に差は認めなかった。従って、両細胞株の造腫瘍性の相違は、移入されたヒト第3染色体の構造やDNAレベルにおける相違によるものではなく、ヒト第3染色体上に位置する遺伝子の発現の相違が関与していると思われた。 2.Surppression Subtractive Hybridization(SSH)法による遺伝子の単離 ヒト第3染色体上より、A9(neo3B)細胞で強く発現し、A9(neo3A)細胞で発現低下あるいは消失する遺伝子を同定・単離することを目的にSSH法を行ったが,現在解析中であり遺伝子の単離に至っていない。 3.口腔癌臨床検体・細胞株における第3染色体の構造異常 臨床検体・細胞株とも第3染色体短腕部の構造異常が認められ、同染色体上の遺伝子の機能消失が口腔癌の発生・進展に関わっていることが示唆された。
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