研究概要 |
サイクリン/Cdkのinhibitorであるp27^<Kip1>蛋白の発現を免疫組織学的手法を用いて検索した。一次抗体として、抗p27モノクロナル抗体(100倍希釈,clonelB4,Novocastra Lab.),(1000倍希釈,clone G173-524,Transduction Lab.)の2種を用いて染色後、検鏡下に3視野を選びそれぞれにおいて全細胞数に対する陽性細胞数の平均を算出した。なお統計処理は、Mann-Whitney's U testを用いた。正常口腔粘膜(n=10)では60.5±7.21%,軽度上皮異形性(n=10)では54.7±8.14%,中等度上皮異形性(n=10)では48.6±8.53%,高度上皮異形性(n=10)では43.5±9.46%,扁平上皮癌(n=60)では37.9±11.32%であった。扁平上皮癌を腫瘍分化度で比較すると,高分化型(n=40)では38.7±12.46%、中等度分化型(n=15)では37.1±10.17%、低分化型(n=5)では33.9±8.32%であり、高・中等度分化型では低分化型に比してp27^<Kip1>蛋白の発現はやや高い傾向にあったが、統計学的に有意差を認めなかった。また予後との関連では、予後良好症例(n=37;5年以上再発無し)では42.8±9.87%、予後不良症例(n=9;腫瘍死)では14.9±6.54%であり、予後良好例は不良例に比べて有意(p<0.05)にp27^<Kip1>蛋白の発現は高かった。その他p27^<Kip1>蛋白の発現は、T分類では、T1/T2症例はT3/T4症例に比べて有意(p<0.05)に高く、stage分類での同様に、stageI/II症例はstageIII/IV症例に比べて有意(p<0.05)に高かったが、頸部リンパ節転移の点では、N0症例は非N0症例に比べて高い傾向にあったが、有意差を認めなかった。なお2種の一次抗体の染色結果に差異は認めなかった。種々の腫瘍細胞の腫瘍分化や転移抑制と緊密な関連が指摘されているp27^<Kip1>蛋白は、口腔扁平上皮癌においてもT分類、stage分類、予後と有意な関連性が認められ、有用な予後因子としての臨床応用の可能性が示唆された。
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