研究概要 |
口腔扁平上皮癌におけるp27^<Kip1>蛋白の発現を免疫組織学的に検索し、分化度、T、N、stage分類、奏効度並びに転帰との関連につき検討を行ったところ、p27^<Kip1>蛋白は高分化例(p<0.05)、N0例(p<0.01)、非進展例(p<0.01)、経過良好例(p<0.05)において有意に高発現し、またp27^<Kip1>高発現例は5年生存率63.3%であり、低発現例(45.5%)に比して有意に(p<0.05)高い生存を示し、Coxの比例ハザードモデルからも有意に(p<0.05)死亡確率が低かった。以上よりp27^<Kip1>は口腔扁平上皮癌細胞の腫瘍分化や転移抑制、治療経過などと緊密に関連しており、臨床上有用な予後因子となりうると考えられた。次にヒトp27^<Kip1>cDNAをpcDNA3.1(Stratagene)にセンス・オリエント並びにアンチセンス・オリエントに組み込んだ発現ベクターを作製し、ヒト口腔扁平上皮癌細胞株(B88)に導入してp27^<Kip1>遺伝子発現の制御を行い、p27^<Kip1>蛋白の過剰発現ならびに低発現が、B88細胞の増殖並びに腫瘍分化へ及ぼす影響につき検索したところ、in vitro並びにヌードマウスモデルにおいてp27^<Kip1>蛋白の過剰発現にて増殖能ならびに浸潤・転移能の低下が、p27^<Kip1>蛋白の低発現にて増殖能ならびに浸潤・転移能の増強が認められた。また腫瘍分化への影響については、HE染色像ではp27^<Kip1>蛋白の過剰発現にて明らかな変化が認められなかったが、低発現にて腫瘍の組織型が扁平上皮様から紡錘形を呈する細胞への変化が認められ、免疫組織染色像では、p27^<Kip1>蛋白の過剰発現にてインボルクリン並びにCAM5.2(Keratin7,8)の発現増強が認められた。これらの結果よりp27^<Kip1>蛋白の口腔扁平上皮癌終末分化との関連性が示唆された。
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