研究概要 |
同所性移植法にて浸潤・転移能に相違のあるヒト口腔扁平上皮癌細胞株(本研究者樹立)において,浸潤・転移関連因子の発現と転写因子について解析を行った。 <発現の相違が得られた浸潤・転移関連因子> 細胞外基質分解酵素MMP-9(ゼラチンザイモグラフィー)および血管新生因子VEGFのisoform189(RT-PCR法)が高転移性クローンには発現していたが,転移能のないクローンには発現していなかった。接着分子インテグリンVLA-2(FACS法)は高転移性クローンでは強発現していたが,転移能のないクローンでは発現が弱かった。サイトケラチン14は高転移性クローンでは発現していなかったが,転移能のないクローンでは発現していた。 <発現の相違がなかった浸潤・転移関連因子> 細胞外基質分解酵素MMP-2(ゼラチンザイモグラフィー)およびラミニン,カドヘリン(免疫染色,westernblottong法)は両クローンに発現していた。また,RT-PCR法にて,血管新生因子VEGFのisoform121と165,細胞外基質分解酵素MMP-1,MMP-7,MT1-MMP,MT2-MMP,MT3-MMPは両クローンとも発現していた。 <転写因子の活性の検討> ゲルシフトアッセイにて,転写因子NF-kappaBは高転移性クローンに活性を認めたが,転移能のないクローンでは認められなかった。転写因子SP-1はともに活性を認めたが,タンパク質の分子量に相違がある可能性があり,現在検討中である。転写因子AP2はさもに活性を認めた。両クローン間での転写因子の活性と浸潤・転移関連因子の発現に相関性があるので,転写因子による浸潤・転移機構の解明のため,さらに解析を行っている。 <Smadの検討> TGF-βのシグナル伝達物質Smadの変異はPCR法とシークエンス法にてDNAのexon1,2,10,11に両クローンの共通性の変異は認めたが,相違はなかった。exon3から9に対しては,現在検討中である。
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