研究概要 |
1)細胞集塊形成とE-カドヘリン、カテニン発現量との関連性 当講座現有の口腔扁平上皮癌細胞株(MOK101,MOK201,SCC9,SCC25)を用いてpoly(HEMA)をcoatしたプレートにて浮遊培養を行ったところ、いずれの細胞も培養2時間後から互いに接着を開始し、24時間後までにcompactな細胞集塊を形成した。とくにMOK101は集塊形成が良好であった。単層培養でのE-カドヘリン、β-カテニン発現量をWestern blot法により検索したところ、MOK101は他の細胞株に比べて両蛋白の発現量が大きかった。次に、MOK101を用いて細胞集塊形成過程において、経時的に1%SDSにて抽出されるタンパク(0.2% Triton X-100 soluble fractionとinsoluble fractionを含む)中のE-カドヘリン、β-カテニン量を検索したところ、細胞集塊がcompactになるにつれてE-カドヘリン発現は増加したが、β-カテニン発現には明らかな変化が見られなかった。またE-カドヘリンは、細胞集塊がcompactになるにつれて0.2% Triton X-100 soluble fraction、insoluble fractionの両方において増加した。これらの点については現在追試を行っている。 2)細胞外基質(ECM)タンパクの細胞分散能の検討 MOK101を用いて、I型コラーゲン、フィブロネクチン、ラミニン5の細胞分散能を、細胞分散アッセイ(河野1998)により検討したところ、ラミニン5が最も分散能が高く、続いてフィブロネクチン、I型コラーゲンの順であった。 3)細胞分散過程におけるE-カドヘリン・カテニン複合体のinsoluble fraction/soluble fraction分布と、β-カテニンのチロシン残基リン酸化の検索 現在、細胞分散過程におけるE-カドヘリン、カテニン発現量の変化、insoluble fraction/soluble fraction分布、β-カテニンのチロシン残基リン酸化を検討中である。
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