筋痛誘発試験法の確立 顎関節症に認められる筋痛に類似した筋痛を実験的に誘発するために、負荷の方法と条件を変えて各種誘発試験を行った。 その結果、誘発される筋痛には2種類あることが判った。一種類は、口唇での割り箸保持やリズミカルな筋緊張であるガム咀嚼によっては誘発されず、かみしめ力を強くした持続的かみしめにより誘発される筋痛であり、もう一種類は、口唇での割り箸保持、ガム咀嚼、持続咬みしめのいずれによっても誘発される筋痛である。 持続かみしめによって誘発される筋痛は、かみしめ力が5%随意最大かみしめ力(MVC)程度では誘発されず、10%MVCでは誘発される例が少数出現し、15%、20%とかみしめ力を強めるに従って誘発される比率が高まることが判った。この筋痛は筋への持続的負荷が強まることにより生ずるものと考えられた。また、負荷が強まっても、ガム咀嚼では誘発されないことから、収縮が強くても、収縮と弛緩を繰り返す場合には筋痛が誘発されないことが判った。 一方、いずれの実験によっても誘発される筋痛は筋肉への物理的負荷とは無関係に他のメカニズムで筋痛が誘発されるものと考えられた。このメカニズムの詳細は明かではないが、これまでの研究から交感神経系の緊張が疑われている。 これらメカニズムの異なる筋痛は臨床的には何ら異なった特徴はないが区別して考えなければならないと思う。来年度の研究では、筋痛を1.持続的かみしめ負荷による誘発筋痛と交感神経緊張型の2種類に分けて、それぞれについて抗侵害受容反応を検討する予定である。
|