下顎前突症の外科的治療について、多くの試みがなされ進歩してきた。しかしながら、over jetが-7mm以上を呈する下顎前突症の治療には、咬合および顔面形態の改善のために、下顎枝矢状分割法を単独で施行する症例や、Le Fort I型骨切り術と下顎枝矢状分割法を併用して施行する症例があるが、術直後にはそれぞれ目的とした改善が得られている。このような症例の場合、どちらの術式を選択するかの基準は、術後の骨切り骨片の安定性および咬合の安定性によるものが大きいと思われる。そこで今回、上記のような研究題目を掲げ、下顎枝矢状分割法単独症例(S.S.M.群)とLe Fort I型骨切り術、下顎枝矢状分割法併用症例(S.S.M.+L.F. I群)との差異を分析することとした。 資料は、骨格性下顎前突症を呈する日本人成人で、上下顎に著しい非対称や開咬および咬合平面の傾斜の異常がなく、手術では単純に上顎は前方へ、下顎は後方へ移動がなされており、そして術前・術後の歯科矯正治療が行われている症例を選択した。S.S.M.群およびS.S.M.+L.F. I群のそれぞれ10症例について、側面頭部X線規格写真を、術前、術直後、術後6ヶ月、術後2年以上経過時に撮影し、分析を行っている。 平成11年度では、上記の該当症例の資料の採取および整理を行ってきた。分析機器の設置が予定より遅れたため、目的とした差異の抽出は未だ行えていないが、今年度中には分析を行い、顎位と咬合の手術前後における変化と術後の長期安定性について検討を加える予定である。
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