平成7年度の文部省科学研究費一般研究C「自律神経系の安定を目標とした口腔外科手術のためのよりよい全身麻酔の検討(課題番号07672189)」として、ウサギのオトガイ神経電気刺激による口腔領域侵害刺激の際に発現する循環変動に対して、各種の麻酔薬や鎮痛薬がどのような変動抑制効果を示すかを検討した。そして、各種の薬剤がそれぞれ特徴ある抗侵害作用を現すことを示し、日常臨床で行われている全静脈麻酔の有用性と今後の検討課題を明らかにした。その一方で、これらの薬剤の作用に関する正常血圧モデルと高血圧モデルでの比較検討が必要であると思われた。 今回の研究は正常血圧ラットと高血圧ラットとで口腔領域侵害刺激時の循環変動の差と、それに対する各種薬剤の変動抑制効果を比較検討することを目的としている。 これまで、ラットのオトガイ神経を中心に口腔軟組織や歯髄などの電気刺激を行い、循環変動を観察してきた。そしてこれらの循環変動に対するフェンタニル(麻薬性鎮痛薬)、クロニジン(α2アゴニスト)、ケタミン(静脈麻酔薬)の効果を検討してきた。その結果、前回の研究によってウサギで得られたのとほぼ同様の結果が得られている。しかし、オトガイ神経など細い神経束では電気刺激後の循環変動の再現性が乏しく、さらにデータの蓄積が必要と考えている。 ラットでの検討に加えて、現在、ウサギのオトガイ神経電気刺激を追加している。刺激時間を30秒以上の長時間とし、循環変動の大きさと同時に変動のパターンに与える各種薬剤の影響を観察している。
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