本研究は、正常血圧ラットと高血圧ラットとで口腔領域侵害刺激時の循環変動の差と、それに対する各種薬剤の変動抑制効果を比較検討することを目的とした。 平成11年度は、正常血圧ラットを用いて口腔領域侵害刺激として適切な刺激法を検討し、ラットでのモデル製作を試みた。 平成12年度は、前年度に引き続き、正常血圧ラットを用いて口腔領域侵害刺激として適切な刺激法を検討した。その結果、ラットの三叉神経各分枝、口腔軟組織または歯髄などの他、脛骨神経、上腕神経、迷走神経などの電気刺激を用いて循環変動が生じることを確認した。しかし、オトガイ神経など細い神経束では電気刺激後の循環変動の再現性が乏しく、神経露出手技や刺激間隔などに工夫が必要と思われた。 平成13年度は、正常血圧ラットを用いて口腔領域侵害刺激時の循環変動と各種薬剤の作用について検討した。その結果、フェンタニル(麻薬性鎮痛薬)やクロニジン(α2アゴニスト)はウサギでのデータ(平成7年度文部省科学研究費一般研究C「自律神経系の安定を目標とした口腔外科手術のためのよりよい全身麻酔の検討(課題番号07672189)」)とほぼ同様の抑制効果を示した。 平成14年度は、さらに症例数を追加し、これらの薬剤の効果を検討した。また、ラットでの検討に加えて、ウサギのオトガイ神経電気刺激による循環変動の観察を追加した。刺激時間を30秒以上の長時間とし、循環変動の大きさと同時に変動のパターンに与える各種薬剤の影響を観察している。 これらのデータから、未だに最終的な結論は得られていないが、現在臨床で行われている全静脈麻酔における、より適切な薬剤の組み合わせについての検討を続けてゆく予定である。
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