本研究は口蓋裂患者の音声言語異常である開鼻声とそれに伴う異常構音をCSL4100コンピュータシステムおよびNasometerを用いて音響学的に解析し、開鼻声の音響学的評価と構音異常改善の指標を作成することを目的として平成11年度より行っている研究である。初年度においてはCSLコンピュータシステムの購入と講座既存のNa someterとの連動接続(同期測定)を行っており、平成12年度より明らかな開鼻声を有する口蓋裂患者を対象として音声サンプルの採取、計測を行ってきた。 研究方法としては、口蓋裂手術前後の患者および正常言語を習得している正常成人を用いて、音声サンプルを採取、Nasometerのマイクシステムを用いて分離採取された経鼻音声と口腔前音の周波数特性の比較を行い、開鼻声の特徴を音響学的に明らかにするべく検討を行った。 その結果、経鼻音声の発声強度は口蓋裂群で明らかに大きな値を示しており、Nasometerのnasalance値と同様の結果で高い相関がみられた。Formant周波数の比較では口蓋裂群の経鼻音声は第2、第3Formant周波数が低下する傾向が見られた。特に第3Formant周波数でその傾向が強くみられた。すなわち第3Formant周波数の低下が開鼻声の音響学的変化に強く関与していることが示唆された。また、聴覚的にも、naasalance値的にも開鼻声の程度の強い症例(聴覚的開鼻声度++、nasalance値60%以上)では明らかにその傾向が強く見られ、正常成人と比較して経鼻音声の増強が第3Formant周波数の低下と関連があると考えられた。また声門破裂音のみられる症例においても第2、第3Formant周波数の低下が著明であり、過去における開鼻声と声門破裂音の関連についての報告と一致するものであった。 なお、本研究の要旨は第45回日本口腔外科学会総会(千葉市)において発表した。
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