研究概要 |
単一の細菌は宿主の免疫作用により殺菌されやすいが,共凝集した菌塊は生体の免疫応答から回避できるといわれ,それゆえ,細菌の保持する共凝集能は重要な病原因子の1つであると考えられている.従って歯周病の発症・進展に対する予防策として,原因菌の定着を阻止する意味で共凝集を中和することは効果的である.本申請は,P.gingivalis共凝集因子の遺伝子を包含するDNAワクチンを作製し,口腔内への共凝集因子に対する特異的な分泌型IgAの誘導を試みる.このアプローチは歯科領域のみならず医科領域においても次世代のワクチンとして脚光を浴びており,将来的に歯周病の予防あるいは治療に応用することを目的としている. P.gingivalis特異的外膜蛋白質遺伝子のORF領域をPCRで増幅し精製した.これを哺乳動物細胞内で蛋白質発現可能なプラスミド(pcDNA3.1(+))のヒトサイトメガロウイルスのプロモーターの下流域に挿入し,大腸菌にトランスフォーメーションを施し,アンピシリン耐性コロニー選択後,シークエンスにより,挿入された断片(954 bp)を確認した.本抗原蛋白質に対するラビット抗体を用いてコンビナント大腸菌におけるP.gingivalis外膜蛋白質の発現を確認した.また,このプラスミドを大量精製した後,リポフェクチン法を用いin vitroにて唾液腺細胞株にトランスフェクッションを行い,ネオマイシン存在下にてスクリーニングした.遺伝子組み込み細胞は同様に抗体を用いて本蛋白質の発現が経時的に持続していることを確認した.また長期培養(3ヶ月)においても,細胞株の発育状態および形状などに何ら変化をおよぼさないことから,このワクチン療法の安全性について確認をした.
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