研究概要 |
目的 腫瘍は局所において血管新生を促し栄養の供給を受け増殖を続ける。そのため腫瘍血管の新生を制御することは癌治療成績の向上をもたらすものと期待されている。我々は現在までにマウス扁平上皮癌細胞に血管新生抑制因子angiostatin cDNAの遺伝子導入を行ないtransfectantsを作製し、腫瘍増殖抑制効果の解析を行なってきた。その結果、angiostatinはマウス扁平上皮癌の腫瘍血管新生を抑制し、腫瘍増殖を抑える作用があることを確認してきた。そこで今回,angiostatinを用いた遺伝子治療の可能性を詳細に解析するために、ヒト口腔癌細胞株KB細胞をヌードマウスに移植し,angiostatin cDNAをin vivoで遺伝子導入し、その効果について解析を行なった。 方法 KB細胞をヌードマウス背部皮下に移植し腫瘍径が約5mmになった時点でp・RC/CMV2 expression vectorに挿入したmouse angiostatin cDNA(5μg)を遺伝子導入用リポソームに包埋した後、腫瘍結節内に2日おきに計5回投与し遺伝子導入を行なった。コントロールとしてvectorのみを導入し、解析を行なった。 結果 angiostatin cDNA投与群はコントロール群に比べ腫瘍増殖を抑制した。In situ hybridizationにて,angiostatinは腫瘍細胞の一部に発現しており、発現が確認された腫瘍組織はその構築の破壊が認められた。またangiostatin cDNA投与群においては血管数の減少と腫瘍細胞のアポトーシスが観察された。 結論 扁平上皮癌に対するangiostatinの遺伝子治療は将来的に有用である可能性が示唆された。
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