研究概要 |
本年度は下顎骨細胞の機械的外力に対する応答特性の大腿骨との比較までを計画していたが、ヒト副甲状腺ホルモン(以下PTH)投与下における下顎骨骨細胞の応答特性に非常に興味ある知見を得たため、その報告を行った。 1、ヒト下顎骨骨系細胞の単離と培養 分化した骨芽細胞及び骨細胞の単離と培養に関しては、既に報告した方法(J.Bone Miner.Res.vol.10及びCalcif.Tissue Int.vol.57)に準ずる。下顎骨骨片は本教室にて行う下顎前突症手術や下顎埋状智歯抜歯術にて切除され通常廃棄される不要な骨片を患者の承認のもとに材料とし、1回のみのコラゲナーゼ処理をしたあとの上清を骨芽細胞、骨細胞は骨片より外生したものを試料とした。 2、骨系細胞に対する機械的外力の負荷 機械的外力はフレクサーセル社製の細胞伸張装置(神奈川歯科大学)を用い(Mikuni-Takagaki,Endocrinology vol.137,1996及びKawata and Mikuni-Takagaki,B.B.R.C.vol.246,1998)、Flex I培養皿(コラーゲンコートしたシリコン膜)の上にさらにマトリゲルを敷いて細胞を移し、接着培養する独自の方法を採っている。伸展刺激前、刺激開始後15分、1時間、3時間、24時間後の細胞の応答を観察し、またこの環境下にPTHを投与の影響を検討した。 3、骨系細胞に対して機械的外力が及ぼす影響の検討 細胞が機械的外力の負荷された状態で示す増殖、基質合成や石灰化の変化は、既に報告した方法(J.Bone Miner.Res.vol.10及びCalcif.Tissue Int.vol.57)で調べた。特に今回は2で示した様々な条件変化を行い、オステオカルシンなどの基質タンパクやIGF-1(インスリン様増殖因子)について、設備備品として購入したサーマルサイクラーを用いて、RT-PCR法を行い、発現を比較した。 その結果、今回の論文(B.B.R.C.vol.264)に報告したように、ストレス負荷後1時間でオステオカルシンの上昇、3時間後に低下がみられ、さらにPTH存在下ではその上昇を助長するように働き、低下に対してはさらなる低下を導く様に働くことが判明した。 このことから下顎骨細胞において、機械的外力負荷は、PTHと常に相乗的に働くことが明らかになった。
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