研究概要 |
オステオカルシン(以下OC)は骨芽細胞により合成、分泌され、ヒドロキシアパタイトに対して強い親和性を示す非コラーゲン性タンパクで、骨形成過程において重要な役割を担うものと考えられ、骨代謝マーカーとして注目されている。今回、抜歯窩治癒過程における新生骨の形成過程を解明する目的で、OCの抜歯窩での経時的な発現、分布について免疫組織化学的方法を用いて観察した。実験方法として、成熟マウスの下顎第2臼歯を抜歯し、1,2,3,4,5,6,7,10,14,21日目に屠殺、下顎骨を摘出、脱灰後、パラフィン切片を作成し、抗マウスOC抗体を用いてSABC法による免疫組織化学染色を施し、抜歯窩を中央領域、側壁残存歯根膜領域、窩底部の3領域に分けて観察した。抜歯窩に増殖する新生細胞は抜歯後3日目までに高い基質合成能を示すとされるが、この時期にはOC抗体の陽性反応は認められなかった。しかしながら抜歯後4日目以降より抜歯窩中央領域から抜歯窩側壁に向かい骨基質の形成、石灰化が進むにつれ、肉芽組織の基質の一部に強い抗体陽性反応が認められ、また、新生骨の周囲に抗体陽性反応の強い細胞が多数観察された。6,7日目には骨組織表層の末石灰化部位及び低石灰化部位の基質中に強い抗体陽性反応が認められたが、細胞間基質での反応は弱かった。また、10,14,21日では扁平化した骨芽細胞内に抗体陽性反応が観察されたが、その反応は経時的に弱くなった。以上の結果からOCは抜歯窩治癒過程において骨基質が合成分泌された後の石灰化の調節因子として働いている可能性が示唆された。 今後は基質の主体をなすI型コラーゲンに対する抗体、骨形成あるいは石灰化との関与が示唆されているオステオネクチン、オステオポンチンなどの非コラーゲン性タンパクに対する抗体を用い、これらのタンパクの経時的な出現状況あるいは組織分布を観察し、抜歯窩治癒過程との関連について検討する予定である。
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