MRSA感染症の治療にバンコマイシン(VM)が投与された結果、VM耐性腸球菌(VRE)が分離され、医科では問題となっているが、口腔では調査されていない。本研究ではヒト口腔由来腸球菌の抗菌薬感受性とVREの検索を行った。70名の被験者から唾液を採取し、100倍連続希釈後、0.1mlをECS寒天培地(10^<-2>と^<-4>、腸球菌=集落周辺が黒変するエスクリン分解株、ECS培地)およびVRES寒天培地(10^0と^<-2>、VRE検出用、VRES培地)にそれぞれ塗抹し培養した。その結果、総被験者に対するECS培地で集落の観察された被験者の割合は86%、黒変集落の検出された被験者の割合は39%であった。VRES培地で集落の認められた被験者の割合は56%、その内黒変集落を有する被険者の割合は23%であった。黒変集落から釣菌し、グラム染色後グラム陽性球菌であることとD群レンサ球菌群別用ラテックス凝集反応でD群であることを確認すると、ECS培地上の黒変集落からは腸球菌が検出されたが、VRES培地上のそれはすべて桿菌であり、Wは分離されなかった。次に、ECS培地で分離した腸球菌のうち48株を選び、15種抗菌薬のMICを寒天平板希釈法(Muller-Hinton寒天培地、10^6CFU/ml接種)で測定した。供試β-ラクタム薬(piperacillin、cefaclor、cefazolin、cefmenoxim、cefmetazole、cefteram、latamoxef、aztreonam)に耐性を示す菌株が1株分離されたが、imipenemには感受性であった。VMのMICはすべて0.5μg/ml以下であった.これら以外の抗菌薬(ofloxacin minocycline(MINO)、erythromycin(EM)、clindamycin、gentamicin)では、EMとMINOで数株の耐性株がみられた。以上のことから、供試培地を用いてヒト口腔から腸球菌およびVREを検出できると考えられるが、今回分離されなかった。次年度はVM投与歴のある被験者から唾液を採取し、VREを検索する準備を進めている。
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