MRSA感染症の治療にバンコマイシン(VCM)が投与された結果、VM耐性腸球菌(VRE)が分離され、医科で問題となっているが、口腔では調査されていない。本研究ではヒト口腔由来腸球菌の抗菌薬感受性とVREの検索を行った。2000年2〜8月に20〜64歳の被験者40名(学生10人、教職員12人、本学附属病院の外来患者18名)と65〜97歳の高齢者65名(70歳健康老人の集いの参加者30名、特別養護老人ホームの高齢者35名)、合計105名の被験者から唾液を得て、腸球菌(CS寒天培地)とVRE(6μg/ml VCM添加CS寒天培地)の検素を行った。その結果、腸球菌の検出率は20〜64歳までが43%、65〜97歳が43%であったが、VREは検出されなかった。つぎに、今回分離した93株の腸球菌の抗菌薬感受性を寒天平板希釈法(Muller-Hinton寒天培地、10^6CFU/ml接種)で測定した。供試β-lactam薬のpiperacillin、cefaclor、cefazolin、cefmenoxim、cefmetazole、cefteramおよびimipenemのMIC_<90>は≦2μg/mlと小さく、これら抗菌薬に高い感受性を示したが、aztreonamのMIC_<90>は8μg/ml、latamoxefは128≧μg/mlと大きく、感受性は低かった。VCMのMICは0.032〜1μg/mlの範囲にあり、感受性は高かった。その他の抗菌薬ofloxacin、minocycline、erythromycin、clindamycinおよびgentamicinのMIC_<90>は0.016〜16μg/mlであり、これら抗菌薬に対する感受性も比較的高かった。耐性菌はβ-lactam薬で4株、マクロライドで3株およびミノサイクリンで34株分離された。β-Lactamase活性はβ-lactam薬耐性株で認められなかった。しかし、肺炎球菌のPBP遺伝子のプライマーを用いてβ-lactam薬耐性株のPBPの変異をPCRで検索すると類似のDNAバンドが検出された。近隣の病院の協力でVCM投与中あるいは投与後の患者3名の唾液を得て、検索を行った結果、腸球菌は検出されたが、VREは検出されなかった。最終年度はVCM投与歴者から唾液を採取する機会をさらに増やし、解析したい。
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