反対咬合患者の構音障害が外科的矯正治療後、どのような経過をたどるのかを明らかにする目的で、本年度は引き続き、外科的咬合改善手術を予定している症例と外科的咬合改善手術後の症例に言語検査と画像分析を行った。言語検査は昨年度と同様に「会話明瞭度構音」について検査し、構音時の音声を録音するとともに、構音操作の際の舌や顎の運動をデジタルビデオに記録した。構音についての「音節、単語、短文、会話」の系統的な検査の結果、外科的咬合改善手術を予定している症例、手術後の症例のいずれにも、聴覚的印象として問題となる構音障害として「側音化構音」などが認められ、聴覚的に問題にならない構音操作上の誤りを示す構音障害として「歯間音化構音」が認められた。いずれの構音障害についても本人の自覚の有無は様々であった。本人の自覚があり、構音訓練を希望した症例については構音訓練を行った。構音訓練に際しては「聴覚的印象ではあまり気にならない構音操作上の誤りを含め、構音障害は無視して良いものか、あるいは構音訓練の必要があるのか、その必要性があるとすればどのような構音訓練が必要か、形態の変化との関連を明らかにする」などの目的で、構音訓練前の構音および構音操作について記録、分析を行った。特に歯間からの舌の突出、下顎の移動などについて外科的咬合改善手術前と後、構音訓練前と後の変化に注目し、今後さらに検討する予定である。
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