外科的矯正治療を必要とする反対咬合患者を対象に、外科的矯正治療後の構音障害の経過と構音訓練の必要性、有効性について検討を行った。 術前には、反対咬合のみの症例では、反対咬合の程度が重い症例に歯間音が多く発症していたが、反対咬合のみの症例よりも反対咬合と開咬をあわせもつ症例がoverjetの値に関わらず、歯間音が多く発症する傾向がみられた。 術後は開咬を伴う症例が少ないので、術前ほどはっきりしてはいないが、開咬が残存した症例には構音正常に改善した症例はないこと、術後開咬が改善された症例に著しい構音障害が正常になった症例があったことなどから、開咬が歯間音の発症に影響することが示唆された。 術後の経過の中では、構音訓練による構音の改善が少なくても全体の40%の症例に認められた。このことは、咬合の改善の得られた術後にあってもなお歯間音は存在すること、そしてその習慣化された歯間音は構音訓練によって改善が得られることがわかった。歯間音はせっかく改善された咬合の状態を後戻りさせる舌の動きでもあることから考えると、歯間音そのものが会話を不明瞭にさせるものではないとしても、構音訓練の意義は大きいといえる。
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