研究概要 |
半導体レーザーを断髄法や覆髄法などの歯髄温存療法に応用するため、ラット(体重約100g)の歯根未完成な歯に断髄をおこなった。#1/2電気用ラウンドバーを用いて上顎第一臼歯の咬合面近心を穿孔し、歯冠部歯髄を除去した後、半導体レーザー(長田電気工業株式会社製 オサダライトサージ3000)を用いて近心根根管口部付近にてレーザーを照射した。当初、半導体レーザーを歯髄切断用のメスとして期待したが、出力2W照射時間1sec,出力1W照射時間2secの条件では、照射直後の歯髄の損傷が激しく、レーザーメスとして歯髄への応用は難しいことがわかった。そこで、半導体レーザーの波長特性である組織深達性を利用して、断髄後の創傷治癒促進に応用した。照射条件は、出力500mW照射時間5sec、さらに出力500mW照射時間10secも検討した。レーザー照射後、水酸化カルシウム剤を貼付し、仮封後、経時的に組織学的に検索した。まずレーザー非照射群では、術後2週目で、庇蓋硬組識が認められたものの、その形成量は不十分であった。レーザー照射500mW5sec群では、術後1週目より庇蓋硬組織の石灰化が始まり、2週目では多量の骨様の庇蓋硬組織の形成がみられた。10sec照射群は5sec照射群に比べ成績が悪かった。すなわち、半導体レーザー照射は創傷治癒を明らかに促進するが、エネルギー総量が大きくなると、逆に治癒遅延をもたらす傾向がみられた。これらの結果をもとに、臨床に応用した。臨床応用例では、半導体レーザーを照射すると、止血が容易になることから短時間での確実な処置が可能になり、特に低年齢児での歯髄処置において有効であった。したがって、半導体レーザーは研究計画立案時における、高出力レーザーメスとして使用するより、He-Neレーザーと同様、組織賦活化の目的で使用した方がよいことが示唆された。
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