小児のCa拮抗薬ネフェジピンによる増殖性歯肉炎の発症機構を明らかにするため、ネフローゼ症候群6名(うち1名は腎移植後)、慢性腎不全2名について定期的に萌出歯種、プロービングデプス、プラークスコアについて診査し、歯肉の状態を記録するため、印象採得・研究用模型の作製、ニコンメディカルニッコールに120mmレンズを装着したフジデジタルカードカメラDS-560にて上下顎歯列を撮影し、画像データとして保存した。ニフェジピンのみの服用症例が少ないため、歯肉増殖を起こすCa拮抗薬アムロジピン、免疫抑制剤シクロスポリン服用中の小児も対象とした。症例は、男3名、女5名で、年齢は、7歳から20歳であった。使用薬剤は、ニフェジピン単独1名、ニフェジピンとアムロジピン併用1名、シクロスポリンとアムロジピンの併用1名、シクロスポリン5名であった。増殖性歯肉炎は8名中5名に認められた。 資料の分析は画像から歯肉の変化を観察すると共に、グラフィックソフトAdobe Photoshop5.0を用いて一定面積範囲内の歯冠部の占める面積をヒストグラムを用いて算出し面積の増減によって歯肉の増殖程度を判定した。面積データの推移では、減少傾向が1例で認められ歯肉増殖の増悪傾向を示していた。しかし、面積変化に有意な差がない症例があり、さらにコンピューター上での画像の重ね合わせにより、歯間乳頭部では突出、歯冠中央部では退縮し、歯肉は形態変化することが明らかになった。歯の交換中の症例は1例であったが、乳歯列期には歯肉増殖がみられず、永久歯の萌出に伴って増殖が始まり、歯肉の形態変化も観察された。歯肉増殖症を発症していない3症例は19歳1例、20歳2例で、薬剤投与開始が15〜18歳と3例とも投与開始が永久歯への交換が終了した時期であった。永久歯の萌出に伴って増殖性歯肉炎を発症した症例があることから、歯の萌出は増殖性歯肉炎の発症に何らかの影響を与えるのではないかと考えられた。
|