急激な体平衡バランスの変化を必要とするスキー運動時において、咬合接触状態がその運動遂行時にどのような影響を及ぼすのかを検討することを本研究の目的とした。急激な体平衡バランスの変化を必要とするスキー運動時においては、頭部をいかに固定するかが重要であると一般的に考えられている。この頭部の固定に関与する顎顔面、前頚部の筋肉に注目し、咬合接触状態を変化させた後、急激な体平衡バランスの変化を必要とするスキー運動をさせ、顎顔面、前頚部の筋電図記録を超小型データレコーダの使用により被検動作の支障にならないように採得し、咬合接触状態の変化が全身運動技能に及ぼす影響を調べた。しかし不正咬合者では、頭部の固定を行う場合に正常咬合者とは異なる筋肉の使い方を行い、代償的に頭部を固定していると考えられるため、咬合接触状態を変化させても両者の間に明確な差が示されないと考えられたので、正常咬合者を被検者として研究を行った。 ゲレンデにおいて直線距離100mの間にポールを等間隔に7本立て、そのポールの間を滑走させた。被検者の左右側の咬筋、側頭筋ならびに胸鎖乳突筋の筋腹のほぼ中央部に小型の生体信号採得用双極電極を貼付し、筋電図は超小型データレコーダで、滑走の記録および時間は小型ビデオカメラで記録を採得した。また、中心咬合位ではうまく咬合できないレジン性の咬合干渉を各被検者に装着し、同じコースを滑走させ、記録を採得した。 結果:咬合干渉を装着した場合、両側の側頭筋および胸鎖乳突筋が咬合干渉を装着する前と比較して筋活動量の変化が認められた。また咬合干渉を装着した場合、滑走時間の延長が認められた。
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