研究概要 |
近年,医療従事者のコミュニケーション能力不足が指摘され,医療面接の教育が注目を浴びてきているが,その効果や評価法が十分に検討されていない。そこで本研究では,医療面接の評価法の信頼性や妥当性を検討したうえで,歯学部学生に対して模擬患者を活用した面接技法のトレーニングを行い,その評価法を用いてトレーニングの効果を測定することを目的とした。 まず,歯科における医療面接のシナリオ,ならびに観察者と標準模擬患者の評価表を作成した。歯科医師11名と臨床実習生25名を対象に標準模擬患者を相手に医療面接を実施し,作成した評価方法の妥当性と信頼性を検討した。1ケース毎に2人の行動観察者と1人の標準模擬患者が評価を行った。次にその評価表を用い,臨床実習生16名を対象に,トレーニングを施した群(実験群)8名とトレーニングを施していない群(対照群)8名に分け,医療面接のトレーニングの効果を検討した。 その結果,行動評価のカッパ係数は中程度の一致度を示し(0.63,0.52),捧擬患者評価のクロンバッハα係数は高い値であった(0.94,0.83)。歯科医の得点の方が臨床実習生の得点と比較して有意に高い値を示した(p<0.001,p<0.05)。また,トレーニング効果においてはトレーニング前では実験群,対照群の間に得点の差はなかったが,トレーニング後には実験群の方が対照群と比較して,行動評価においては危険率1%未満で,標準模擬患者評価においては危険率10%未満で有意に高い値を示した。以上のことより,本評価法の信頼性と妥当性が示唆されるとともに,本トレーニングが医療面接技法の向上に有用であることが示唆された。
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