研究概要 |
目的 無痛歯科治療の一環として、噴射切削装置による偶発露髄を惹起した場合の歯髄の変化は、既に報告した。今回は歯科用レーザー装置による、偶発露髄を惹起した場合の歯髄の病理組織学的変化を究明する目的で実験を行った。 方法 実験動物(成犬)にペントバルビタールの静脈麻酔を施した後、歯に対してEr:YAGレーザーを用いて、先端出力100mJ/pulse,10ppsに設定し、充分な注水下に、5級窩洞を形成した。次いで窩底部を穿孔し、露髄面を作成した。その後実験を1)そのまま放置したもの、2)水酸化カルシウム製剤カルビタールで直接歯髄覆罩の後酸化亜鉛ユージノールセメントで封鎖したもの、3)ライナーボンドIIレジンで直接覆罩し、クリアフィルAPXレジンで封鎖したもの、4)4META/TBBレジン(スーパーボンドC&B)にて封鎖したもの、の4群に分けた。術後1日14日30日後、実験動物を屠殺した。実験歯を固定後、硝酸エタノールで脱灰、パラフィンに包埋し、6μmの切片とし、H・E複染色を施し、顕微鏡下で観察し、歯髄組織の状態について比較判定を行った。実験例数は38例である。エアータービンに330カーバイトバーを用いて露髄面を作成して同様の処置を施した10をコントロールとした。 結果 実験群1(11例)では不良が100%であった。実験群2(11例)では、良好72,2%、概良27,2%であった。実験群3(9例)では、良好66.6%、概良22.2%11.1%であった。実験群4(7例)では、良好71.4%、概良14.2%、不良14.2%であった。 考察 実験群2では、歯髄組織の治癒を認め良好な結果を得ることができた。実験群3および4では、実験2より劣るものの、多くの症例が修復に向かっていた。実験1では、歯髄は壊死におちいり、あるいは強度の炎症性反応を示し、修復は認められなかった。 結論 無痛歯科治療に有効な歯科用レーザー装置によって露髄を惹起した場合、水酸化カルシウム製剤、あるいは接着性レジンの適切な応用によって、歯髄組織の保護が可能であることが判明した。
|