研究概要 |
1.1999年5月,宮城県内の高校生483名(男子:250名,女子:233名)を対象として口臭に対する意識調査を実施した。また,学校歯科検診時に口腔の健康状態を自己評価させ,診査者の判定との差を評価した。これらのデータを用いて口臭に対する心配の頻度と口腔診査の結果,口腔の健康度の自己評価,口腔関連の自覚症状,日常生活行動や人間関係等の関連を分析した。その結果,口臭に対する心配の頻度が多い人は,口腔関連の自覚症状を強く感じており,家庭や学校などでの人間関係に満足していない傾向にあることが示された。さらに,口腔の健康状態の自己評価と口腔診査にあたった歯科医師の判定との差により,対象者を3群(1:一致群,2:自己評価が甘い群,3:自己評価が厳しい群)に分け,質問項目との関連性を分析した。その結果,自己評価が厳しい群において最も高いPMA値が認められ,彼等は歯や歯ぐきからの出血を自覚する頻度も口臭に対する心配の頻度も最も多かった。また、彼等の睡眠時間は短く,生活満足度は低い傾向にあった。 2.大学生15名を対象としてハリメーター(口臭測定機器)を用いた口臭測定と口臭に関する意識調査を実施した。その結果,ハリメーター値と口臭に対する心配の自覚頻度には有意な相関が認められた。しかしながら,ハリメーター値と関連性が認められたのは食事の規則的摂取のみであるのに対して,口臭の自覚頻度には口腔内の乾燥感、舌苔の付着という口腔関連症状と生活満足度の程度が関連していた。ハリメータによって測定可能な臭気物質は口臭の成分中の一部であることが知られているが、本調査の結果からも口臭を自覚している人の口臭を客観的に評価するには不十分であることが示された。今後、官能試験や舌苔スコア等とハリメーター値を比較し、主観的な口臭の認識の程度を客観的に評価するために最も適切な方法が何であるかを検討する計画である。
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