研究概要 |
2000年5月,高校生106名を対象として,揮発性硫化物(VSC)測定機器による口臭の測定,舌苔付着の評価,質問紙調査を実施し,口臭の客観的評価と主観的評価の関わりをMann-WhitneyのU検定を用いて分析した。その結果,口臭ありと評価された生徒(VSC値≧150ppb)30名は口臭なしと評価された生徒76名に比較して,冷水痛や甘味刺激痛を感じる頻度が低く(p<0.05),生活満足度が低い傾向(P<0.05)を示したが,口臭の主観的評価には有意差は認められなかった。また,口臭がない生徒を対象に口臭に対する心配がある群とない群の2群に分け,口腔内の自覚症状および日常生活行動の比較を行った。その結果,口臭に対する心配がよくある生徒は口渇感の程度が強く(p<0.05),舌苔を認識する頻度や日常生活におけるストレスが多いと感じていた(p<0.05)。ついで,対話時に口臭が「心配になる人」と口臭を「自覚している人」の間の認識特性の差を分析した。その結果,口臭が心配になる人は舌苔を認識する頻度が低く(p<0.05),他人の口臭が気になることが多く(p<0.05),日常生活においてストレスを強く感じており(p<0.05),VSC値も高かった(p<0.05)。一方,口臭を自覚している人は口渇感の程度が強かったが(p<0.05),VSC値に差は認められなかった。 自臭症患者の一般的特徴として口渇感があるが,本研究でも他覚的な口臭がないにも関わらず自己の口臭を自覚あるいは心配している生徒は口渇感の程度が強く,さらに日常生活におけるストレス感受性も強かったことから,彼等が自臭症予備群的な位置にあることが示唆された。以上のことから,口臭に対する不安度が高い人に対してはストレスを軽減するようなカウンセリングを実施することによって,自臭症への移行を予防できる可能性が示された。
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