研究概要 |
平成12年度では,外科的矯正治療を施行した患者の下顎運動を解析し,咬合の安定性を静的な部分だけでなく動的な視点から把握することを目的に,限界運動およびチューイングサイクルなどをナソへキサグラフを用いて検討した.なお顎関節部断層X線規格写真による検討は患者の了解を得られない面があり行わなかった. 奥羽大学歯学部附属病院において骨格性下顎前突症と診断され外科的矯正治療を受けた患者のうち,本研究の趣旨を理解し協力の得られた9名から資料を採取し,1名(器機の不調によりデータが不正確と判断した)を除く8名のデータを分析した. 最大開閉口運動では,ほとんどの症例で咬頭嵌合位から最大開口位において左右への偏位を示していた.ガム咀嚼によるチューイングサイクルでは,8症例中5症例がチョッピングタイプで3症例がグラインディングタイプを示していた.また全体的な特徴として,線状パターンのストロークを示すものが多いことやストロークにばらつきが多いことなどが挙げられる.作年度中にSAM咬合器に装着した口腔模型から咬合平面版により計測した左右の咬合平面傾斜角について,本年度はさらにリファレンスメジャリングインストゥルメント(RMI)を用いて,左右の機能的咬合平面傾斜角を求めた.その結果,咬合平面版とRMIによる咬合平面傾斜角の差は,最小0.2°〜最大3.6°,平均1.7°であり,咬合平面版でもある程度正確な計測が可能であると思われた. 左右の矢状顆路傾斜度に大きな差があり開閉口運動時の下顎頭の動きは直線的で咀嚼パターンはグラインディングタイプを示していた症例が,全症例中ICP-RPのズレが最も少なかったことは,咬合の安定性について評価する場合には多方面からの評価が必要であることを示唆するものであると思われた.
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