研究概要 |
歯科用金属によるアレルギーの発現については、多くの症例が報告され、作用機序の解明とともに簡易なスクリーニング法の確立が望まれている。そこで今回、水銀など歯科用金属の感作性を代替法のMEST(Mouse Ear Swelling Test)で検討するとともに、in vitro検査法のリンパ球刺激試験を行い、アレルギー発現のスクリーニング法としての有用性を検討し、以下の結果を得た。 【1】感作陽性物質のDNCB(1-Chloro 2,4-dinitrobenzene)は、初回の感作で症状の発現を得たことから、MESTは感作性評価のスクリーニング法として適切であることを示した。しかし水銀やクロム、ニッケルでは初回の感作では感作が成立せず回数を重ねる必要があった。 【2】とくに水銀では、発赤や軽度の腫脹を生じる起炎症濃度で感作した場合には症状を発現するが、炎症を示さない低濃度では繰り返し感作しても症状を呈しなかった。またアジュバントにより感受性を高めたり、炎症を起こす高濃度水銀を繰り返し接触させた場合には、逆に炎症が抑制され、免疫寛容を示す結果であった。したがって水銀は、歯科用金属では最も感作し易い金属ではあるが、免疫寛容も引き起こし易いことを示した。 【3】パッチテストの陰性者および陽性者の被験者からリンパ球を採取し、in vitroで刺激試験を行ったところ、クロムとコバルトはパッチテストの結果と一致して、パッチテスト陽性者のみリンパ球反応も陽性を示した。しかし水銀とニッケルは、パッチテストの陽性・陰性にかかわらず、いずれの被験者もリンパ球反応が陽性で、日常生活で感作し易く、いずれの被験者も感作しているが、免疫寛容の結果・パッチテストで陽性を示さないものと推察された。これらの結果から、アレルギーの発現には感作性とともに免疫寛容もスクリーニングする必要性が考えられた。
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